みちのく駅弁行脚
〜その6・終〜
2007年10月6日〜8日、三連休パスを用いて周遊した旅は、東北地方の新しい駅弁を探す旅でもありました。本当はまだまだ続くのですが、とりあえず今回は山形駅の駅弁紹介で締めたいと思います。私がこの旅のフィナーレにふさわしいものとして選んだ駅弁は、JR20周年を記念したお弁当。この駅弁を食べながら、いろいろな思いに駆られる自分がいました。
JRが発足して2007年で20年。一口に20年と言ってもなかなかイメージできませんが、例えば上の画像の山形新幹線「つばさ」が15周年を迎え、この車両がまもなく廃車になるということを考えれば、とても長い年月が経ったということは理解できます。国鉄が民営化されてこの20年間、駅弁の衰退は目を覆いたいほどではありますが、逆に、それでもしぶとく生き残ってきたのも駅弁、と言えなくもありません。ともかくも、JR20周年記念弁当を出せる駅弁屋は民営化の荒波を乗り越えてきた逞しい駅弁屋であり、それを素直に喜びたいと思います。
上は2007年10月8日、山形駅に新幹線つばさが停車した2分間に乗車デッキで受け取り購入した「二十歳のころ」950円。調製元は森弁当部であり、電話で事前予約しておきました。新作駅弁です。
なぜこの駅弁が「二十歳のころ」という名前なのか、正式にはわかりません。しかし、JR20周年だから「二十歳」だということには関係していそうです。パッケージに描かれた女性は大正ロマンを思わせる美人ですが、よく見ると「豚」です。何ともおちゃめなデザインですが、でも、どことなく垢抜けていて、思わず手にしたくなるのは私だけではないでしょう。レトロな雰囲気を醸し出しつつ、新しい雰囲気も併せ持った、まるで「無常」と「常住(永遠不滅)」、「不易」と「流行」が混在するような、不思議な魅力を持ったパッケージだと思います。
中身を見ましょう。山形米はえぬきを100%使用したごはんの上に、特製だれに漬け込んだボイルド・ポークのスライスを何枚か載せてあります。そしてその豚肉の上には「オーからい」と呼ばれる、口の中に入れれば「オーからい!」と叫びたくなるほど辛いという大根・胡瓜・人参に唐辛子を混ぜた山形特産の漬け物も添えられています。
おかずは厚焼き玉子、蕗煮、かりかり菜なめこ、そして、厚切り甘酢生姜。ポークスライスに飽きないように組み合わせたおかずばかりで嬉しいです。豚肉はチャーシューのように固いものを想像していましたが、茹で豚ですからそんなこともなく、脂もそれなりに落ちていて、とても美味しかったです。
ところで、「JRってハタチなんだな。。。」という思いを巡らせながら車窓風景を眺めていると、不思議なことにいろいろな旅の思い出が甦ってきました。時々、自分のハタチの頃はどうだったのかな、などという思いさえよぎります。そう想うことが旅愁であり、また郷愁なのかもしれないな、などと、駅弁を食べながらそんな感慨に耽ったりもします。
そして、車窓風景は田園地帯、山岳地帯、どこまでも続く街並み、収穫前の色づく畑、そして駅。すれ違う列車。車窓から見る風景がどこか懐かしく、また新鮮であるからこそ、そんな風景に酔いしれたくて、また旅に出てしまうのでしょうか。そして、また20年経った列車の中では、果たして駅弁を頬張ることができるのだろうか、「できる」であってほしいと、そんなことも考えたりしました。
山形駅の駅弁「二十歳のころ」を山形新幹線車内で賞味し、純粋に美味しいと感じながらも、JR20周年を懐かしく振り返る。また、そのもっと前からあったプラス100年の駅弁の歴史をノスタルジックに想像する。、この駅弁がこの日、この列車の終着駅である東京駅(東日本縦断駅弁大会)でも買えるという現実を嬉しくも悲しくも受け止める。、さらにこの先20年の駅弁存続を願い、未来に思いを馳せる。。。最後はとうとう、僭越ながらそんな大それた感慨にどっぷりと浸る旅になってしまいました。
東北地方の新作や話題の駅弁を求め、大館から山形まで旅した「みちのく駅弁行脚」に最後までお付き合いくださり、どうもありがとうございました。
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ボトックス
以下はオマケです。下は2008年7月20日、大宮駅で購入した森弁当部・山形駅「おらだのごっつお」1000円。大宮駅に輸送される限定駅弁で、2008年7月19日より、「みちのく日和」と題して新発売された限定駅弁シリーズ7種のうちの1つ。厳密には大宮駅弁です。新杵屋・米沢駅「大人のまかないどまん中」1000円、松川弁当・米沢駅「米沢牛焼肉松川辨当」1500円、関根屋・秋田駅「秋田比内地鶏の鶏めし」1100円、斉藤松月堂・一ノ関駅「あぶり焼き牛肉弁当」1000円、福豆屋・郡山駅「おむすび道中記」900円、吉田屋・八戸駅「さば蒲焼き風弁当」900円、森弁当部・山形駅「おらだのごっつお」1000円があります。
限りなく「二十歳のころ」に似ていますね。やまがた米はえぬきを100パーセント使用も同じ。ただ、「二十歳のころ」では「ボイルドポーク」か書かれていた表示が「庄内豚」に変わりました。
見た感じ、じっくりタレに漬け込んだというその度合いが、こちらはあっさり系のような気がします。実際、食べてみると大変柔らかいチャーシューという感じでした。あくまでも個人的な印象として違いを敢えて探せばです。
下は2012年3月11日に山形駅で購入した「おらだのごっつお」。
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