みちのく駅弁行脚 〜その2〜

2007年10月7日。大館から日本海3号の立席特急券を行使して弘前へ、さらにキハ40に乗り換えて五所川原へとやって参りました。JR五所川原駅の隣には、古めかしい建物の津軽鐵道・津軽五所川原駅があります。この小さな駅で、2007年9月28日より名物列車「ストーブ列車」をモチーフにした「ストーブ弁当」の一般販売が開始されました。

   

昭和の雰囲気をそのまま残している出札窓口には、今でも硬券と呼ばれる厚紙のきっぷが売られていました。発車時刻表も縦書きの漢数字。何もかもが懐かしい、日本のふるさとのような駅がここにありました。JR五能線をまたぐ跨線橋を渡って津軽鐵道のホームに出ると、そこにはストーブ列車の車両が静かに冬の出番を待っています。車両の屋根に突き出た煙突が目印です。

   

2007年10月7日、事前に予約して津軽鐵道津軽五所川原駅の窓口で受け取り、購入した「ストーブ弁当」。3日前までに、2個からの注文予約となります。1000円。

   

ストーブ列車は通常カギがかかっています。今回は「ストーブ弁当」を予約する際に、見学させてもらうよう頼んでおきました。ホームの先端に乗務員の詰所があり、そこで受付をするのですが、当日その場で気軽にお願いしても許可されそうな雰囲気でした。

    

1両に付き、2つのストーブが設置されています。「ストーブ列車」は毎年11月中旬から翌年3月下旬まで運行され、五所川原「立佞武多(たちねぷた)」の時期に合わせた「真夏のストーブ列車」の企画も何回か実施されたそうです。中にはこのストーブでスルメなどを焼いて食べる観光客もいるといいます。それ用の焼き網まで付いていました。

   

燃料は何と、石炭。火力は強そうです。いわゆる「ダルマストーブ」。ストーブの横に石炭入りのバケツと水の入ったポリ容器が無造作に置いてあるところが田舎らしくていいですね。

    

さて、見学はこれくらいにして、「走れメロス号」に乗って駅弁をいただきます。津軽鐵道に乗車するのは四半世紀ぶりでした。今回は太宰治の生家「斜陽館」や津軽三味線館のある金木(かなぎ)駅までの往復です。

   

今回は秋なので「鈴虫列車」となっています。リーン、リーンと軽やかな鈴虫の音が旅の疲れを癒してくれます。参考までに、夏の期間には「風鈴列車」が楽しめます。その他、「ホタル列車」、「うたごえ列車」、「生ビール列車」など、これらの列車はビックコミック「ちゃぺ!津軽鉄道四季ものがたり」(8話連載)の中でも紹介されました。

    

それでは「ストーブ弁当」をいただいてみることにしましょう。ぱっと見でオリジナリティーに溢れたおかずがたくさん入っているのですが、お品書きが入っていないのがちょっと残念でした。

   

まず、竹籠容器の中には松前漬のような、イカ、カズノコが入った漬け物の容器が目に付きます。このイカはスルメを水で戻したものだそうで、ストーブ列車で炙るスルメをイメージしているのだそうです。カズノコが入り、昆布を入れたことでねっとりと仕上がっていました。食べてみると、一つ一つの具は大きいですが、やはり松前漬けに雰囲気が似ています。

   

それから、その上のイカに詰められたものは寿司。但し、キャベツと食用菊、人参もたくさん入っています。その右の新鮮な帆立の上には玉子の黄身が塗られていました。さらにその下、黒ごま団子は団子と思いきや、中身は里芋でした。これ、ストーブの燃料になる石炭をイメージしているのだそうです。

   

下の画像の左端で豚肉巻きの中身は青森でよく採れる「ミズ」という山菜と人参。帆立の右側にある鮭はハラスのような感じでトロうまでした。さらにその上の茄子の肉詰めは中身が海老のすり身ということでした。その他、ミョウガ、海老のあられ揚げ、キュウリの漬け物など、津軽地方の食材にこだわっています。なお、おかずは季節によって内容を変えていくようで、ハタハタの田楽、くわい、キノコなど、今後も旬の物を積極的に入れるとのことでした。

   

おにぎりは2個入っていますが、これがまたスゴイ。若生(わかおい)と呼ばれる若い昆布を巻いたおにぎり、そして梅しそおにぎりです。特に梅しそおにぎりは、これでもかと言わんばかりの具だくさん。田舎らしくてたいへん好感が持てました。

   

沿線は鉄道林に囲まれていたかと思えばろ、だーっと広い所にも出て、なかなか変化があって面白いです。この日はたまたま児童の団体客があったようで、乗車した列車は珍しく3両編成でした。

    

金木駅の一つ手前には面白い車両が停まっていました。それは、「落書き列車」です。SMAPの香取慎吾さんがとある番組の中で、津軽鉄道利用促進のため、1996年に落書きしたもの。「しんご」はわかりますが、右上の「ありさ」は観月ありささんだそうです。

    

お目当ての金木駅で下車。21世紀になった今でもタブレットを使用しています。金木の駅前は閑散としていますが、電信柱にくくりつけられたスピーカーからは津軽三味線の音色が聞こえてきます。

    

下は徒歩7分ほどのところにある太宰治記念館「斜陽館」。「生まれて、すみません」の作家の生家を一回りしつつ、ここでも「ストーブ弁当」がお供です。

    

そして、すぐ近くにある「津軽三味線会館」。三味線独奏の音色と津軽弁のトークに酔いしれながら、ここでも「ストーブ弁当」がお供です。

    

今度は、ぜひ真冬にやってきて、スルメを焼きながらこのお弁当を食べ、地吹雪も体験してみたいと思いました。 この駅弁の予約および問い合わせは津軽鐵道(電話0173−34−2148)へ。

   

再び五所川原に戻り、日本海に沈む夕陽を堪能するために、次はリゾート列車に乗り換え、五能線を経由して秋田を目指します。

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