山陰冬の駅弁旅〜その1〜

2014年12月24日、サンライズ出雲で山陰の地に降り立ちました。予想とは裏腹に、今回も雪がなかったです。好天の下、出雲、松江、米子と下車し、最後に岡山の駅弁を紹介します。まずは、女性客をターゲットにした、「ANAGO」の新作駅弁から。

     

なんとも女性週刊誌の表紙的な掛け紙で、今までにない斬新な絵柄になっています。「キレイになるには『あなご』がミソだ!」などと、味噌味の穴子も入っている駅弁としての洒落も利いています。ですので、私もちょっと遊んで、松江駅前にあるご当地出身の園山俊二さんのアニメキャラクターとツーショットにしてみました。このアンバランス感が、かえって微笑ましいかもしれません。

     

駅構内の売店では、こんな感じで売られていました。2013年12月に販売が開始され、2014年の京王駅弁大会にも出品されました。上は2014年12月24日に現地で購入した、松江駅「日本海あなご(AnaGo)弁当」1340円。

     

一文字家の社長さんのお話によると、毎朝サンライズ出雲が到着すると、東京からの若い女性客がたくさん降りてくることから、彼女たちをターゲットにしたヘルシーで美容によろしい駅弁を売り出そうと考えたとのことでした。2013年には60年に1度の出雲大社の遷宮もあり、縁結びの神様でもある出雲大社への女性観光客が増していた時期でもありました。掛け紙には「決め手は、コラーゲン&ビタミンA!」「コレであなたも出雲ガール!」「美肌をキープ、女子力アップ」など、女子の飛びつきそうな見出しが踊っています。画像には写っていませんが、掛け紙の両端には観光案内が写真付きで描かれ、「名所」という文言は使わず、「パワースポット」と表現しているところも憎いですね。

     

さて、中身ですが、味噌と醤油と2種類の穴子煮が楽しめます。味噌は、ペリーの黒船が来航した年1854年、城下町松江に誕生したという、錦味噌を使用して炊いているそうです。醤油炊きの穴子煮も奥出雲の本醸造醤油を使用。伝統の味付けの穴子の下に敷かれているご飯は酢飯でした。その意味では「穴子寿司」であるかも知れないです。

     

野菜漬け、大根漬けというヘルシーな漬け物の横に、黄色い和紙に包まれていたのはフルーツ餅。あくまでも女性がターゲットのようです。最近は瀬戸内海の穴子が激減しており、名物の穴子駅弁も貧弱になるか価格を上げるかの二者択一の様相を呈してきました。そんな中にあって日本海産の穴子は肉厚で、穴子好きの私も満足できました。

     

ところで、松江には名物駅弁がいくつもありますが、そのうちの1つが赤貝を使った駅弁です。特に、冬の風物詩とも言える「赤貝」。しかし、近年は産地である中海での漁獲が減り、仕方なくこの駅弁では国産の赤貝を使用して食文化の継承を図ってきたようです。下は2004年1月10日購入の「赤貝めし弁当煖煖」。

        

「煖煖シリーズ」の1つで、加熱式の駅弁です。赤貝を甘辛の味でごはんに炊きこんだお弁当。 コクがありかみしめる度にウマミが口一杯に広がります。

     

下は2005年11月11日、小田急町田店の駅弁大会で購入の「赤貝めし弁当」。松江で言う「赤貝」とは「サルボウ貝」のことです。昔から中海の特産品として有名でした。

       

宍道湖七珍に入っていないのが不思議なくらいの名物ですが、それは宍道湖よりも中海が特産だからかもしれません。近年は環境の変化で獲れなくなってきたということです。炊き込みごはんの上に赤貝、白魚、えび、あごちくわなど。

     

そして、下は2014年12月24日、松江駅で購入した「中海産赤貝めし弁当」。1500円。2013年10月24日に完全予約制のお弁当として発売開始した駅弁です。人参やごぼうと一緒に炊きこんだ赤貝ご飯の上に、生姜をきかせて甘辛くふっくらと炊いた赤貝をたっぷりと載せてあります。白魚や揚げ海老、あご野焼も松江ならではの味。

     

因みに、上はデジカメ、下はスマホで撮影しましたが、スマホの方が美しい気が。。。
さて、本題ですが、昔から山陰で好まれていた「赤貝めし」ですが、それは赤貝が魚屋ではなく八百屋で売られていたほど、この地方では日常的な家庭料理だったようです。殻蒸し、のっぺ汁にも赤貝は使われていたとか。しかしながら、近年は環境の変化からか、すっかり漁獲がなくなり、中海に赤貝は生息してはいるものの、危機的な状況になってしまったそうです。

     

しかし、2013年より中海漁協の努力などもあって漁獲が再開され、一文字家では郷土料理の復興を願うべく、完全予約制での「中海産赤貝めし弁当」として、「赤貝めし」の復活を果たしたということなのでした。とってもいい話です。もちろん「はじめ人間ギャートルズ」の時代には、赤貝は豊富にあったことでしょう。(文脈に無理がありますね・・・)次は神話の地、出雲へと向かいます。

     

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