北陸・駅弁王国の旅
〜その6・終〜
富山から出発した北陸駅弁の旅も、ここ敦賀が最終目的地です。駅弁本などでたまに、駅弁趣味を始めると最初は特殊弁当に走り、やがて幕の内に行き着くものだ、などと書かれているのを目にします。しかし、私は両方とも好きなのでまだまだ未熟ですが、それでも質の高い幕の内弁当に出会うと、とてもワクワクしてきて嬉しい気分になります。しかも、旧き良き時代の「駅弁」の雰囲気を持つものならなおさらですね。。。それでは今回の旅のフィナーレを飾る駅弁をご紹介しましょう。
まず掛け紙には毛筆でしっかり「
気比の松原
」と書かれ、周囲には
気比の
松原が茶色と緑でシンプルに描かれいています。ひと言で言えば昔風の掛け紙の駅弁。派手派手しい写真など一切なく、4色程度の色づかいと和紙を用いた掛け紙、綴じ紐でその存在をアピールしています。こういう昔ながらの正統派駅弁は最近少なくなりましたね。。。でも、それだけに期待できそうです。
で、やはり中を開けると期待を裏切らない内容でした。この駅弁は海鮮幕の内です。ごはんの形は「松」をイメージしています。一番おいしいと感じたのは焼き鯛でした。ただ、鋭い骨が案外多いので気をつけなければなりませんが、味は絶品、まさにとろける味とはこのことです。それから、昆布煮。これもトロトロしていました。真ん中の揚げ物は海鮮爪フライで、これはカニ、エビ、鯛すり身、貝柱が混ざったもの。残りの2つのフライはタラとイカでした。そして、カツオ胡桃も案外イケました。梅ゼリーは最後に食べると口の中をサッパリとさせてくれます。
ところで、「気比の松原」を掛け紙やパッケージの蓋にあしらった駅弁はいくつかあります。下は2007年1月4日、CHさんが敦賀駅で購入。貴重な画像どうもありがとうございました。以下はコメントです。
「敦賀名物幕の内弁当。これは1月4日に敦賀駅で購入しました。700円。中身は実用的で700円で十分満足できます。北陸線の700円幕の内は富山にしろ、金沢にしろ、案外よいものがそろっています。」
下の敦賀駅「御辨當」は2005年6月18日、砂丘の白兎さんが購入。戦前駅弁の復刻版です。
「季節外れの大遠征の道中で、敦賀駅ホーム上売店にて入手。あの『わかさ』記念弁当を彷彿とさせる、とてもレトロな掛紙に惹かれて、昼飯で調達。見てのとおり、これぞ昔の“上等御辨當”!あっさりした味付の幕の内なので、私のような人間にはありがたい。」とコメントしてくださいました。
下は1978年10月10日。 いずれも卵焼き、かまぼこ、焼き魚等が入った普通のお弁当でした。左の掛け紙には気比の松原など、付近の名勝や旧跡が描かれており、右の掛け紙では写真になっています。
さて、駅弁「気比の松原」に話を戻します。下は2006年12月17日にCHさんが購入した「気比の松原」。このご投稿があったからこそ、今回の旅はこの駅弁で締めくくろうと思っていたのです。貴重な画像どうもありがとうございました。以下はコメントです。
「12月17日、敦賀駅で購入。1200円。幕の内弁当ですが、おかずが非常に多く入っています。真ん中にはカニ爪と白身魚のフライ(タルタルソース付)、右上は鯛、その下にえび、卵焼き、かまぼこ、ご飯の上は鶏の照焼、その上はくるみ、煮物、漬け物、デザートにオレンジと梅ゼリーなどです。ご飯が少なめですが、上品でいいお味です。」
最後に「気比の松原」の掛け紙の全体をお見せしておきます。駅弁の中身はもちろんですが、この掛け紙にも魅力があるからです。先述したように、毛筆体が中心で、写真はなし。色合いも地味で渋い色調です。全体的に落ち着きと気品を感じさせますね。しかも、使用している紙は和紙ですから、駅弁は食べて楽しむと同時に掛け紙を見て楽しむという、旧き良き時代からの駅弁「通」には好まれると思います。
近頃の駅弁には掛け紙のあるものが少なくなり、パッケージタイプのものが増えて久しいと思いますが、最近ではそれすらもやめて、プラ容器に透明蓋をかぶせ、そこに商品ラベルを貼っただけのようなものも少しずつ増えてきているようです。私の立場としては、旅情を感じるためにも駅弁にはやはり掛け紙か専用パッケージがほしいところです。しかし仕出し弁当からの納入業者が増えた最近では「駅弁」の定義もより曖昧となって、私自身、掛け紙や専用パッケージがないものでも「駅弁」と見なしてサイトで紹介しているという状況です。そういう中、「気比の松原」のように内も外も整った伝統的な「駅弁」らしい「駅弁」が今でも残っているのは大変貴重なことです。掛け紙を含めたトータルな駅弁文化を守るという意味において、今後もぜひ残して欲しいと強く思いました。
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