北陸・駅弁王国の旅 〜その1〜

越前カニ、甘エビや白エビ、マス、鯛、ブリなど、海の幸がとても豊富な北陸地方。在来線の特急が行き交い、車内販売や金沢駅などでは北陸沿線の駅弁が一堂に会しています。そんな「駅弁王国」とも言える北陸地方は、駅弁が食文化の一つだと感じさせてくれる技の宝庫でもあります。2007年8月23日から24日にかけて富山を起点に敦賀まで、西に下るルートでの駅弁レポートを紹介します。

   

まずは富山の270余年にわたる伝統の食文化の極致とも言える駅弁からご紹介しましょう。2007年8月23日21時、予約したものを富山駅で受け取った「源の竹ずし」。3000円。画像では見えませんが、和紙で出来た包みの裏には料理人の名前が記載されています。それほど自信と責任を持って提供する味の逸品なのでしょう。

    

4日前までの事前予約のみの販売。受け取りは昼頃になるそうですので、午前中に富山を発つ場合は駅売店が開いている前夜22時までに受け取っておくとよいと思います。なお、その場合は5日前までに予約する必要があります。消費期限は製造から48時間ですので前日受け取りでも大した影響はありません。

   

鱒は日本海近海で春3月から6月に獲れる最も美味なサクラマスのみを使用しているそうです。しかも、身を厚く手さばきし、サクラマスの旨味を最高度に引き出すということです。

    

鱒とすし飯は緑の生笹に巻いて、両端をイ草で結んで越中で獲れた竹筒の中に入れ、その竹筒の口は藤つるで封じてあります。なんと自然の幸が生んだ、野趣溢れる寿司でしょう。この竹筒の中で「ますのすし」としての絶妙な熟成がなされてゆくわけです。

   

2007年8月24日、この「竹ずし」は贅沢極まりない私の朝ご飯となったのですが、その前にせいぜい腹を空かしておこうと、この「竹ずし」を持って朝の散歩に出かけました。2006年に開業した富山ライトレールに乗って終点の岩瀬浜まで行きました。そして、岩瀬浜海岸や、かつて伝統的な鱒寿司に多く使用された近海の鱒が遡上するという神通川の河口を見てきました。

    

朝の気持ち良い時間帯に日本海の浜風に当たって気分がリフレッシュできました。 ここはなぜか野良猫が多く、餌付けされているような感じもありました。白猫、黒猫、三毛猫。。。一眼レフ片手に早朝から写しまくりのご婦人もいたほど。。。私の被写体は、ネコもいいですが、やはり駅弁でしょうか…。 左下の画像では、猫の前に「竹ずし」を置くといういたずらをしてみました。魚には目がないはずの猫でしたが、密閉状態だからか、「竹ずし」に過激な反応はしませんでした。右下の画像では、赤灯台の奧が神通川の河口のようです。

    

富山駅前には「富山の薬売り」と思われる銅像があり、ここでも「竹ずし」を置いていたずら。私の家にも以前は富山の薬売りが薬箱を置いていって、たまに補充や精算をしに来ていました。今でもはっきりと少年時代の記憶として残っています。また、右下の画像は鱒のふるさとであるという神通川の鉄橋を渡る瞬間を狙って撮ったものです。

    

さて、もう一つ、以下に紹介するのは駅弁売店で通常扱う「駅弁」ではありませんが、将来的に新たな感性の食文化となりうる可能性があるということで。。。富山の源・本店と金沢駅構内にある百番街店だけで売られる限定品「ますのいぶしずし」です。

   

芳しく香るいぶした鱒の上に歯触りが楽しい酢蓮根を載せ、さらに白板昆布で包んだというのが「ますのいぶしずし」です。販売価格は1500円。こちらは消費期限はその日のうちに。。。私は金沢店で購入して土産とし、その夜に自宅で賞味しました。

    

スモークされたマスの旨さはサーモンのそれのように、今や誰もが知っている「うまい」味。それに薄切りの酢蓮根がしゃりしゃりとしてその歯応えはもちろん、薄板昆布の旨味と、中に隠れた生姜の千切りのキュッとした味が、何とも言えぬハーモニーを奏でているかのようです。同じ日に「竹ずし」を食べてしまったからでしょうか、マスの質が少々落ちても「うまい」とごまかせる味だな、と天の邪鬼な私は一瞬思ってしまいました。それほどスモークマスと酢バスとの相性はバツグンです。

    

さて、話を戻します。駅弁らしい食べ方をするために、特急「しらさぎ」に乗車して「竹ずし」をいただきました。どこまでも続く緑の風景の中で、緑の竹筒から取りだして食べるピンクの「竹ずし」は、車窓風景にも融け合っていますね。

   

日本海にもまれたサクラマスの見事な勇姿を包む竹と熊笹。そのしっとりとした緑の芳醇な香りを醸し出し、極上のマスの旨味を引き出させるという気品のある最高級ますのすし。その本質は「雅な野性」の一語に尽きます。サクラマスの熟成もまさに絶妙。至福の瞬間でした。

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