夏・ぐんま駅弁旅〜その4・終〜 

2008年8月6日から9日までの3泊4日、高崎に滞在していました。そして最終日、現存する日本最古の駅弁屋「おぎのや」があり、この旅の締めにするのに最もふさわしいと最初から思い決めていた横川駅を訪れることにしました。

    

2008年8月9日に購入。「峠の釜めし」がちょうど誕生50周年を迎えていましたが、前日に予約しておいた駅弁は3つ。今まで何度かふられ続けていた「峠の鳥もも弁当」、ノーマークで買いそびれていた「峠の幕の内弁当」、そしてオススメだからと言われた「峠の焼おにぎり」。これらの駅弁は朝9時ぐらいになら予約しての取り置きが可能なようです。なお、一般売りはもう少し遅めの時間帯の方が確実でしょう。

    

まずは「峠の焼おにぎり」。これ、すごいですね。今までネット上では何度か見ていましたが、最近覗いた公式サイトにはなかったので、私自身の記憶から完全に忘れ去られていました。しかし、開けてびっくり玉手箱。焼きおにぎりが1つ、そしておかずがはいったパックが3段重ねになっていて、非常に丁寧な作りでした。その割に値段はリーズナブルな500円。つまり、良心的なお弁当というわけです。

    

ねぎまの焼き鳥と、嬉しいことにレタス、パセリ。なかなか見ない組み合わせで新鮮でした。焼きおにぎりには3つの中では唯一となる味噌が塗られていました。

    

こちらのおかずは昆布煮にきんぴら。醤油味の焼きおにぎりは「おふくろの味」そのもの。

    

こちらは胡瓜の漬け物に栗きんとん。胡瓜が辛いので、栗きんとんの甘みにはホッとさせられます。

    

続いて「峠の幕の内弁当」、800円。これも力強く、それでいて食べる人に心を配っている素晴らしい出来の幕の内弁当です。

    

舞茸や竹の子、人参など、こんなに野菜の煮物が充実している幕の内弁当が他にあるでしょうか。一つ一つの素材にも微妙な味付けの違いが感じられ、飽きさせない内容となっています。一口カツの下には千切りキャベツ、そしてレモン。そしてさりげなく紅ショウガが添えられています。どうしたらカツを美味しく食べられるか、それを考えて必要なものをそつなく入れているのです。

    

漬け物の野沢菜、昆布煮、控え目に切られた焼き鮭、そして嬉しいことにナゲットのような柔らかい衣の鳥唐揚げが2つ。俵ごはんには黒ごまに海苔、小梅まで付いて、フルーツまで添えられれば、玉子焼きやカマボコがなくても、これはもう完璧な幕の内。峠を越えるに十分な、ボリュームたっぷりの個性派幕の内としての個性を大いに主張しています。

    

そして、今回お目当ての「峠の鳥もも弁当」、700円。この値段はお買い得です。これもまた素晴らしいお弁当と言わねばなりません。

    

クリスマスにでも食べるような鳥もも焼きが1本置かれ、できた隙間に栗の甘露煮、生の胡瓜、レモン、蒟蒻、大根の漬け物、そして容器に入ったマヨネーズ。ごはんは伝統的な俵ごはんに黒ごま、小梅が載せられています。

    

ご飯が進む昆布煮もうれしいですが、コリコリとした食感がたまらない砂肝と、舌の上でペースト状に溶けていく鶏レバーが鶏料理専門店並みのうまさ。今度来るときもこの駅弁は外せませんね。数も少ないようですし、予約しないとまずお目にかかれないというつもりでいた方がいいかなと思います。

    

桐生や水上にはもう駅弁がありませんが、現在残っている群馬の駅弁屋を巡った今回の旅では、荻野屋、たかべんという、食べる人の心をしっかりと掴んで離さない老舗の実力を肌で感じることができました。メイン食材と副菜とのメリハリは暑い夏を乗り切るにも十分なパワーを示すだけでなく、このおかずやごはんを美味しく食べるにはちょっとこれが欲しいな、と思う時、折り箱の中にそれが必ず入っているという心憎い駅弁は滅多にないと思います。
その意味で、今回取り上げたような「看板」ではない駅弁にも客のことを考えて心を配り、食材の食わせ方を知り尽くしているという2つの駅弁屋さんには、お世辞ではなく尊敬の念すら覚えています。これからも近くにあってお互いに切磋琢磨して美味しい駅弁を生み出し、伝統を守っていって欲しいと思います。


また、わたらせ渓谷鉄道直営の新鋭レストランが作る車内弁当も侮れません。こちらも県内に良い手本があるからなのか、相当な実力の持ち主でした。特に2つの老舗の良さを引き継いでいるのは全体への「バランス」「心配り」と、メイン食材の「自己主張」。蓋を持ち上げるほどの舞茸天ぷらを見ても分かるように、見た目も中身も美味しいのですから、是非もっと宣伝して、いつかそれが目当てになるぐらい有名な名物弁当になってほしいと思います。


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