中国山地縦断駅弁旅 〜その4・終〜
この旅の終わりは、2006年から2007年にかけて大変貌を遂げた岡山駅の駅弁で締めくくります。この1年間で駅構内は大きく変化し、駅弁に関して言うとJR系の業者が撤退してしまうほどでした。しかし、時代は流れても変わらない駅弁があります。長い歴史を持つ郷土食を駅弁にアレンジした「祭ずし」は、今後も岡山駅の名物駅弁として、いや、岡山の名物土産として末永く残っていくことでしょう。
2007年7月30日に「特急サンライズ出雲」の車内販売で、8月2日には岡山駅新幹線コンコース売店で購入した「塗り箱入り祭ずし(特上祭ずし)」。1250円。
例えば折尾駅「かしわめし」、横浜駅「シウマイ」、松山駅「醤油めし」などのように、見てしまえば必ず買ってしまう駅弁というのが私には幾つかあります。それは今回の旅でも同じことで、日を変えて2回食べたのが松江駅「銀の鯖丼」とこの岡山駅「塗り箱入り祭ずし(特上祭ずし)」でした。つまり、岡山の「祭ずし」はこの地に来たらこれを食べなければ始まらないという、駅弁なのです。「祭ずし」はノーマルなものだけでなく、現在でも売られるお伽噺の
「桃太郎」をはじめ、過去に売られた
「キテイちゃん」、そして
「桃太郎電鉄」のキャラクター付き「祭ずし」を買ったこともあります。ある意味で「駅弁リピーター」ですよね。
下は2007年7月30日朝に寝台特急サンライズ出雲の車内販売で購入した「塗り箱入り祭ずし(特上祭ずし)」。ままかり酢漬、さわら酢漬、サヨリ酢漬、シャコ酢漬、ヒレコ酢漬、いくら醤油漬、椎茸煮、竹の子煮、海老煮付、も貝、きざみ穴子、花れんこん、木の芽、生姜、錦糸玉子が入り、「桃太郎の祭ずし」よりも豪華な内容となっています。
「祭ずし」の由来について、以前、倒壊ていおーさんが調べてくださったことがありました。
「
『岡山の祭り寿司は、その名の通り庶民がお祭りのときに食べたもので、本来は具が底に敷き詰めてあり,酢飯だけが見える状態のものでした。これを食すときにひっくり返していたようです。当時、ぜいたくは禁止されていたようで、お殿様やお侍さんに対して「庶民は祭りのときも質素な生活をしていますよ」ってアピールしておいて、お殿様などが立ち去った後に、ひっくり返してたくさんの具がのったお寿司を食したようです。今も岡山市内のお店では実際にひっくり返して食すところがあるようです。』
というのと、
『江戸時代、備前岡山の藩主池田光政候は、質素倹約を奨励し「寿司と甘酒の他は一汁一菜とする」というお触れを出しました。「それなら、寿司の上にうまいものをぎょうさんのせよう。それでも一菜だ。」と町人たちは魚や野菜を寿司飯に混ぜ込み、これに汁を添えて体裁だけは一汁一菜としました。』
というのがありました。」
倒壊ていおーさん、ありがとうございました。昔は「祭ずし」という呼び方はなく、「ばら寿司」だったようで、「祭ずし」は三好野本店さんが命名し、今や全国的な知名度を誇るまでになりました。三好野本店さんの公式サイトには、
「良質の岡山産のお米を使用し、やや甘口のすし飯の上に、瀬戸内の新鮮な海の幸、山の幸をふんだんに使った郷土色あふれる「ちらしずし」です。三好野ではこの「おすし」がお祭りにはなくてはならないものであることと具材の豊富で賑やかな様子を見て、「祭ずし」と命名させて頂き、広く全国的にご賞味頂いております。」
と書かれていることからも伺えます。
2004年6月26日、倒壊ていお−さんが購入した「塗箱祭ずし」。貴重な画像ありがとうございました。以下はコメントです。
「福山ばら寿司のイクラが?というのがありましたが、これもイクラ入りです。素材にこだわったとありましたが、入れ物にこだわっているがウエイト高いように思えました。」とコメントしていただきました。
容器へのこだわりもそうですが、「桃太郎祭ずし」に比べてしゃこの酢漬けやイクラの醤油漬けが入っていると言うところがグレードアップなんでしょうね。」
下は2004年10月31日購入のものです。塗り箱はプラスチック製。いろんな具が入っていて、まさに「祭」の賑やかさをもった駅弁。
下は2007年7月30日、「サンライズ出雲」の車内で食べたもの。瀬戸内海の海の幸が満載。潮の香りがしてきそうな、伝統的な岡山の名物駅弁は、一口食べると「岡山に来たんだなあ」と思わせてくれます。
時代が移ろってもその土地に根を生やしているので、決して揺るぎないし変わらない駅弁の1つ、岡山駅「祭ずし」。「流行」ばかりが取り上げられる駅弁界にあって「不易」の駅弁と言えます。
保存のきく「寿司」という特性を生かし、富山駅「ますのすし」のように駅弁を超えたその土地の「名物土産」になる日も、きっと近いのだろうと思います。
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