下は2013年5月18日に東京駅「駅弁屋祭」で代理購入してもらった「加賀魯山人弁当」1800円。画像は山中塗で二段重ねの容器の上蓋部分です。

     

孔子の言行録「論語」由来の四字熟語に「箪食瓢飲」というのがあります。子曰、「賢哉回也。一箪食、一瓢飲、在陋巷。人不堪其憂。回也不改其楽。賢哉回也」(『論語』雍也)。書き下し文にすると、子曰はく、「賢なるかな回(かい)や。一箪(たん)の食(し)、一瓢(ぴょう)の飲、陋巷(ろうこう)在り。人は其の憂ひに堪へず。回や其の楽しみを改めず。賢なるかな回や」。ということで、訳すと、「孔子先生がおっしゃることには、「偉いなあ、(弟子の)顔回は。わりご一杯の飯に、ひさごのお椀一杯の飲み物(という慎ましい暮らし)で、せまい路地裏に住んでいる。(一般の)人は、そんな(貧乏暮らしの)辛さにたえられないだろう。(だが、)顔回はそんな暮らしぶりを改めようとせず、自分の楽しみを貫いている。偉いなあ、顔回は。」と。」となります。この一節を芸術家にして美食家であった巨匠、北大路魯山人が愛していたのでしょう。「在陋巷不改 其楽賢哉」(せまい路地裏に住み、そんな貧乏暮らしを改めない方が自分の楽しみを貫ける。)の部分を引用して塗師・辻石斎に盆や膳を作らせ、東京に構えた会員制高級料亭「星岡茶寮」での「瓢膳」に使用していたとのことです。今回の「加賀魯山人弁当」の弁当箱は山中漆器だそうで、その上蓋にお膳の図柄が再現されているのはそうした理由があってのことでしょう。

     

調製元は、加賀温泉駅弁の高野商店です。北大路魯山人は金沢に招かれたとき、「食」と「器」が調和した加賀の食文化に感銘を受けたそうです。また、前述した塗師・辻石斎との出会いにより、山中塗の最高傑作「一閑張日月腕(いっかんばりにちげつわん)」を生み出したとされています。この「加賀魯山人弁当」は、塗師・5代目辻石斎が監修し、山中塗の容器に加賀の料理が満載の内容で作られたものです。そのお披露目も兼ねた先行販売として、2013年5月8日〜21日までの期間限定で東京駅「駅弁屋祭」で実演販売されました。今後は加賀温泉駅や金沢駅でも予約販売するとのことです。

     

山中塗の容器に加賀の料理が満載の内容で、大根のぜいたく煮や小茄子の田楽、鯛の琥珀揚げ、鮎の踊り焼きなど、加賀と魯山人にまつわる食のエピソードをもとに作られています。まず、下の画像では魯山人が好きだったという大聖寺川で捕れた小ぶりの鮎を塩焼き(踊り焼き)にして、今回は竹の子の炊き込みご飯の上に、はじかみと共に載せています。

     

下の画像では、魯山人が辻石斎の家に泊まったとき、必ず奥様が作る大根のぜいたく煮を望んだというエピソードによるもの。魯山人は「山代のたくあんが日本一美味い」と書物でも述べているようですが、糠漬けの大根をお湯で塩抜きして甘辛く煮込んだという手間暇かかった加賀の田舎料理だそうです。また、魯山人は茄子が好物と言うことで、小茄子の田楽と、白山麓に古くから伝わる堅豆腐、さらに小ぶりのものが好きだったという鴨(合鴨)のロース、魯山人が考案したという鯛の琥珀揚げなどが入っています。

     

その他、加賀の味であるカニしんじょ、鱈の子のうま煮、旬の加賀野菜、穴子とゴボウの八幡巻き、生麩団子、だし巻き玉子、花麩、こごみ煮、季節の酢の物(大根なます)など、季節によって、多少メニューも変わっていくとのことです。

     

添付されている箸も山中塗のものです。北大路魯山人が愛した食と器、そしてその「心」をこの駅弁で味わいに、加賀温泉に来てみませんか?

     

下は2006年4月8日、CHさんが加賀温泉駅で購入の幕の内「加賀友禅」。1100円。2013年では1200円となっています。

     

貴重な画像をありかとうございます。以下はコメントです。
「梅型のご飯の周りにたくさんのおかずが入っています。笹には草餅が包まれています。 おかずが豊富に入っています。以前より販売されていますが、なぜだか高野商店のHPには載っていないんですよね。 最近は金沢駅の北陸トラベル売店でも見かけるのは「湯の華」が多く、あまり「加賀友禅」は見かけません。」


     

下の「湯の香弁当」は1980年頃9月22日。菱川歌麿の美人画が使用された趣のある掛け紙です。内容的にはおそらく幕の内に近かったのではないでしょうか。実際、2000年を過ぎても幕の内タイプで存在しましたが、2013年現在では「加賀旬菜百科 湯の華」と名を変えて、加賀の食材をふんだんに使った高級感漂う幕の内系の弁当になっているようです。

           

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