水了軒の工場では総合的衛生管理システムの概念に基づき、食品の安全と清潔な環境を確保するため、製造工程においてゾーンニング(衛生区域の指定)を明確にしています。冷凍冷蔵庫・下処理場までを@汚染ゾーン、調理加工までをA準クリーンゾーン、盛りつけ包装までをBクリーンゾーンと区別し、お互いに行き来できないように万全を期しています。ここまで衛生管理を徹底してはじめて、私たちが安心して食べられる駅弁が新大阪駅、大阪駅、天王寺駅の売店(近鉄難波駅、上本町駅での積み込みも可)に並ぶのですね。 右の画像は松塚社長。最上階の3階にある包装資材倉庫を案内してくださっているところです。私たち5人の見学者もここに入るためにヘッドキャップをつけ、白衣に着替え、手を消毒し、エアシャワーを浴び、専用靴に履き替えています。奥に見えるのは弁当容器の折箱。この部屋の中には虫一匹たりとも侵入できません。 |
包装資材倉庫で見つけました。 左の画像。左上の段には「大阪戎弁当」、下の段の右には「山陽新幹線開業30周年記念復刻お弁当」の掛け紙。上の段右側にはバラン(おかずやごはんの味がお互いに移らないための、草の形と色をした仕切り)の入った箱も見えます。 右の画像。手前はご存じ名物駅弁「八角弁当」の折り箱です。 |
まず、@汚染ゾーンには左のような肉解凍室や肉処理室をはじめ、野菜・果物、魚の解凍室や処理室、洗浄室があります。また、大型の冷凍庫や冷蔵庫がいくつもありました。 冷凍庫などで保存していた食材を調理しやすいように下準備をするのがここのゾーンです。菌の繁殖を防ぐための万全の備えがここにはあります。このゾーンに入った時、殺菌剤の匂いがしていたことからもわかりました。 |
次に、A準クリーンゾーンにやってきました。 ←各エリアでは作業衣も色分けされています。 |
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←炊飯室だけは2階にあります。完全にロボット化されていますが、はじめちょろちょろなかぱっぱ・・・1時間かけて普通に炊くのは旨さへのこだわりです。 |
A準クリーンゾーンでは調理・加工がおこなわれます。ここで水了軒ならではの特徴は、充実した近代設備と手作業部分とをバランス良く融合させていると言うことです。 左は水了軒のおかずの中でも評判の高い高野豆腐のための専用コンロです。既製品をただ解凍、加熱して用いるようなことをせず、手間暇かけて、人の手で作るからこそ真心が伝わります。ファーストフードにはない、スローフードとしての誇りというか、明治21年に創業し、百年以上の伝統を守り抜くプライドというか、たとえ人件費がかさみ、非効率的ではあってもこれだけは譲れないという精神こそが、食い倒れ大阪にあって旅行客をうならせ、地元民にも支持されてきた水了軒の味とぬくもりなのでしょう。そんな水了軒の人気と信頼の秘密を垣間見たような気がしました。 |
こちらは連続フライヤーと言われる揚げ物用のロボットです。天ぷらやフライものの微妙な油の温度や揚げ時間などは、料理人のカンよりもむしろ機械の力を借りた方が、より均質化された変わらぬ味が実現できる部分です。こういうところは思い切ってロボットを用いて効率性を追求しているところが、さすが大阪の企業という感じがします。 |
↑炊いたごはんをかき回すロボットです。 |
↑巨大な回転釜。一度に大量の調理が可能です。 |
いよいよ盛りつけと包装をする最終段階Bクリーンゾーンに入ります。 |
↑区分けされた箇所に丁寧に盛りつけていきます。 | ↑手前に見えるのは綴じひもです。 |
↑俵型ごはんの型押しロボット。 | ↑包装もロボットが行います。 |
↑こうしてひとつの駅弁が出来上がります。この日の夕方、新大阪駅のホームで買いました。 よく見ると、この駅弁の俵型ごはんは上のロボットで型押しされたんですね。 左上の端にある高野豆腐は専用のコンロで作られたものです。それからそれから・・・ こう考えていくと、駅弁ひとつにもいろんな人の手と最新の技術とが合わさってできている ということがわかりますよね。ふつうに駅弁を食べているだけでは気づかないけれども、 駅弁の世界はとぉ〜ってもドラマチックで、しかも奥深いのです。 |
[追記] 若い社長さんですが、さすがに綴じひもを掛けるのは速かったです。 阪神駅弁大会期間のお忙しい中、本当にどうもありがとうございました。 |