2006年3月2日購入の「あったけえきりたんぽ弁当」。

    

この駅弁「あったけえきりたんぽ弁当」は2006年3月1日から秋田駅や秋田新幹線「こまち」、五能線「リゾートしらかみ」の車内で売り出されている新作駅弁です。とは言え、「きりたんぽ」と言えば秋田を代表する郷土料理。実は以前にも調製元の関根屋さんでは「きりたんぽ」を駅売りしていました(下の画像参照)。今回は約20年ぶりの復活と言うことで、とても気合いの入った駅弁となり、よりおいしく「きりたんぽ」を味わうため、加熱式容器を採用しています。

    

きりたんぽを浸すスープには比内地鶏の鶏がらスープを使用しており、薄く醤油の色が付いています。原液を舐めてみると、地鶏のしっかりとした深い味わいとコクが感じられました。

    

伝統的な「きりたんぽ鍋」は「きりたんぽ」に糸蒟蒻、ごぼう、舞茸、椎茸、人参、セリなどを入れて醤油ベースの比内地鶏スープで煮るというのが一般的らしいですが、パッケージの側面に表示された材料を見ても本格的な「きりたんぽ鍋」が味わえる駅弁として期待が膨らみます。秋田を代表する「鍋」料理が味わえる、この駅弁は全国でも珍しい鍋料理の駅弁と言うことになるでしょう。

    

ところで「きりたんぽ」とは、たとえれば「ちくわ」の形に練った米を焼いたものです。なぜ「ちくわ」の形かというと、それは秋田杉の棒に練った米を巻き付けて焼き、そのあとで棒を抜くからだそうです。

また、なぜ「きりたんぽ」と言うのか、それは「たんぽ槍」から来ているそうです。「たんぽ槍」とは、練習用に綿を詰めた布である「たんぽ」を槍の先につけた槍のこと。そう言えば学生時代、美術の時間に絵の具を「たんぽ」につけて絵を描いたことがありましたが、その「たんぽ」でもあるのでしょう。そして焼いた練り米がその「たんぽ」を切った形と似ているので、「きりたんぽ」と呼ばれるようになったのだとか。

    

そもそもこの「きりたんぽ鍋」の由来には諸説があるようですが、昔から炭焼きや秋田杉の伐採のために山籠りをした人達が、山小屋で残ったご飯などを練って鶏鍋に入れ、あるいは練ったご飯に味噌を塗って食べたというのが始まりというのが有力な説のようです。

    

さて、実際に味わってみましょう。すでに具材は味付けがなされているようですが、別添のスープをかけ、中身を浸してみます。

    

そして、加熱スタートのひもを引き、8分待って、蓋を開けてみたら、中から出てきた温かい湯気はおいしそうな醤油とキノコの香りを放っていました。

    

きりたんぽは4つ入っていました。比内地鶏や舞茸、煮ゼリ、ゴボウから出た旨味を吸って、味わい深く、また素朴な懐かしい味でした。「鍋」というほど汁気はありませんが、かと言って「きりたんぽ」がごはんのかたまりにすぎないというマイナスの印象もありません。ちょうどいい具合に浸されているのです。このあたりは関根屋さんの技を感じました。

    

温められると煮ゼリや人参、椎茸も加熱されていい色になってきました。

    

しっとりとして舞茸やセリ煮ともよく合っており、とっても素朴で安心できる味わいです。食べていると体だけでなく、心もポカポカに温まるような心持ちがしました。私は秋田出身ではないですが、故郷を思い浮かべながら静かにしんみりと食べてみたい、そんな「ふるさとの味」がやさしく詰まっている駅弁だと思いました。

最後に、この駅弁とパッケージの間には小さな買い物袋が挟まっていました。これはおそらく食べ終わった容器を入れるゴミ袋なのでしょう。そういう細かい気配りができる関根屋さんに大変好感を持ちました。

 東北の駅弁リストに戻る  東北のお薦め駅弁に戻る  

 トップページへ戻る