昭和2年8月5日午前11時。
春の名曲として親しまれている謡曲に「羽衣(はごろも)」がありますが、この天女の舞う舞台は沼津の西に位置する原の浮島ケ原です。
謡曲のフィナーレには、

「さるほどに、時移って、天(あま)の羽衣、浦風にたなびきたなびく、三保の松原、浮島が雲の、愛鷹山や富士の高嶺、かすかになりて、天つ御空(あまつみそら)の、霞にまぎれて失せにけ〜り」

と謡われています。三保の松原、浮島ケ原、そして愛鷹山と、上空を天女が羽衣を優美になびかせて舞います。また、のどかな浦の景色を謡い、めでたい世を寿ぎ地上に七宝を降らせます。そして、やがて富士山の霞にまぎれて消えて行くという美しい場面です。


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