2009年1月20日(京王駅弁大会会場にて1月8日より先行販売)、けやき出版より初めての駅弁本を出しました。


 「駅弁掛け紙ものがたり」

〜古今東西日本を味わう旅〜 

   

 けやき出版 A5判136頁 ISBN 987-87751-378-8 C0026 上杉剛嗣 著

この本の内容をひとことで言いますと、明治から平成まで、樺太から台湾、満州まで、合計177枚の駅弁掛け紙集とその解説です。なお、「駅弁の小窓」サイトには未掲載のものも多く含まれています。また、明治から平成まで、「軍弁」などを含めた駅弁の歴史を語るコラム、駅弁大会のコラム、JRと私鉄に分けたオススメ駅弁ベスト3のコラム、駅弁と旅情のコラムなどを加えました。

少しだけ「はじめに」より引用してご紹介いたします。

 駅弁は日本の伝統的な食文化であると言われ、その折箱の中に世界には類を見ない、日本人特有の心が詰まっていると考えられてきました。そして、その日本人の心とは、例えば花鳥風月を愛でるような風流心はさることながら、儚いものを惜しみ慈しみ、そこから永遠の美を感じとる心でもあると言われています。
 兼好法師は「徒然草」の中で、満開の花や満月など、一方的に見せつけられたような完全美よりも、散り萎れた花や雲に隠れた月など、どこか不完全でたよりない状態にこそ趣があると述べています。完全美とて一瞬の、すべてが儚い「無常」の世の中において、むしろ不完全な状態を埋めようとして想像を働かせていく過程が「味わう」ことであり、そうすることで初めて対象そのものの本質を心で捉えることができ、その感動は「無常」を超えた永遠の美に高められる、と考えたのです。
 前置きが長くなりましたが、今や冬ともなれば全国の百貨店やスーパーで駅弁大会が盛況です。また、駅弁を旅のグルメとしてより豪華に、より美しく中身が紹介される書物の刊行も、次から次へと花盛りの様相を呈しています。まさに時代は駅弁ブームなのかもしれません。しかし、その中にあって、駅弁の中身写真が一枚もなく、お弁当を包んだ「掛け紙」だけで駅弁を語ろうとする本書は不完全な状態に思われ、いかにも流行に反したものと言えます。
 実際、けやき出版からこのお仕事を頂戴したとき、中身の写真を見せずに、たった一枚の掛け紙だけで、どこまで駅弁の魅力を伝えられるのだろうかという不安でいっぱいでした。やはり私にも駅弁は中身と掛け紙があってはじめて「駅弁」である、という認識が強かったからです。もちろん本書では現在に至る一二〇年以上の「駅弁の歴史」に重きを置いていますので、特に昔の駅弁については、一枚の掛け紙で語っていくしか方法がないという覚悟はしていたのですが。
 しかし、実際に書き終えた今、その不安は消えてしまいました。掛け紙は中身の写真と違って、兼好法師の言う「不完全なもの」であるが故に、そのギャップを埋めようと、いろいろと想像させてくれたのです。そうして私が一枚一枚の掛け紙から受け取ったメッセージは、その時代の考え方であったり、人々の生活の様子であったり、日本の美しい風景であったり、あるいは時代を超えた旅情であったり、この駅弁は美味しいぞというメッセージであったり・・・本書を読まれる皆さんにとっても、駅弁掛け紙を眺め、あれこれと想像しているうちに、その時代と対話ができるかもしれませんし、時代を超えた永遠の真実に出会うのかもしれません。どうぞ一枚ずつ、駅弁を掛け紙で味わってください。
 一つエピソードをご紹介します。ちょうどこのはじめに」を書いていたとき、本書でもご紹介し、私の駅弁サイトでも展示している大正後期の恵比島駅・大黒屋「御赤飯」掛け紙をご覧になった岩手県在住の方からメールが来ました。その方は大黒屋さんの御子孫でした。それによると、「この駅弁は曾祖父と祖父が四国から北海道に渡り、言葉に出来ない苦労の末に作り上げたもので、その掛け紙画像を八六歳の父に確認すると非常に感激し、しばらく言葉になりませんでした。NHKテレビ小説『すずらん』の舞台でもあった実家は昭和に入り火災に遭い、当時のものは何も残っておらず、テレビ放映後に町へ売却して資料館となり、一家は盛岡へ転居しました。約九〇年経って、仏壇の中の曾祖父と祖父が、その存在すら忘れていた『御赤飯』掛け紙との再会を果たせたので、とても感激しています。」という内容でした。約九〇年前に捨てられなかった一枚の掛け紙が巡り巡って私の手にあり、それを奇跡的にご覧になった調製元御一家の歴史の空白を埋め、絆を深めた瞬間でした。こうしてみると、たった一枚の掛け紙にも想像を絶した物語やドラマを含んでいることがよくわかります。「御赤飯」の掛け紙は、その生き証人となったのです。


昨今の駅弁ブームの中にあって、この駅弁本は、駅弁の中身写真を1枚も使用していない「型破りな本」です。もちろん、掛け紙だけで駅弁の魅力を語り尽くせるとは考えていませんが、中が見えないことで読者の皆さまが想像して、一つ一つの駅弁を心で味わっていただくことができるはずです。中身の写真を載せることで、そのグルメ的な華やかさにお腹が一杯、幸せな気分になる駅弁本も当然ありでしょうが、「駅弁掛け紙ものがたり」では、読むとお腹が空いて、駅弁の旅に出たくなるような内容を目指しました。従来の駅弁本らしからぬというご批判もあろうかとは思いますが、ご理解いただける方が手に取ってくだされば幸いです。


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※「京王駅弁大会会場」とは「駅弁グッズ」売り場のことです。但し、先行販売ですので数に限りがあります。

        
      
↑京王駅弁大会駅弁グッズ売り場の様子(2009年1月10日)   ↑京王駅弁大会駅弁グッズ売り場の様子(2009年1月18日)

2009年1月10日(土)に売り場を見てきましたが、内容がマニアックだからか、想像通り、売れ行きは今一つでした。でも、10冊ぐらいは売れていました。感激です。購入してくださった方、本当にありがとうございました。この場をお借りしてお礼申し上げます。m(_ _)m

※「駅弁掛け紙ものがたり」は
AMAZONや、ヤフーブックス楽天ブックスなどでもお買い求めできます。、「けやき出版」からのお届けは後払いです。

※2009.1.16  ・ジュンク堂書店2009年1月店員のお薦め本に「駅弁掛け紙ものがたり」が選ばれ掲載されました。
※2009.1.19  ・丸善注目の新刊【趣味実用・旅行 】1月19日に駅弁掛け紙ものがたり」が選ばれ掲載されました。
※2009.2.4    ・毎日新聞[福岡都市圏版]の「ブックエンド&新着本:福岡市総合図書館のおすすめ」に新着本として紹介されました。
※2009.2.5   ・讀賣新聞[東京多摩版]朝刊に紹介記事「駅弁掛け紙で旅気分」(5段抜き記事)が掲載されました。

※2009.2.22  ・朝日新聞読書欄[全国版]朝刊にサエキけんぞうさん(ミュージシャン)の書評が掲載されました。
※2009.2.23  ・Amazon.co.jp 書籍売り上げランキング総合2417位(グルメ本ランキング2位)を獲得しました。
※2009.3.4   ・朝日新聞[東京全域版]朝刊に紹介記事「駅弁もう一つの味 立川の出版社 本に」がカラーで掲載されました。
※2009.3.4   
・テレビ朝日「やじうまプラス」(こだわりラストスパート)で、やくみつるさんが紹介してくださいました。
※2009.3.8   ・朝日新聞[静岡版]朝刊に紹介記事「駅弁包み紙 味な歴史」がカラーで掲載されました。
※2009.3.11  ・NHKラジオ第1放送「ラジオあさいちばん」で佐治真規子キャスターのインタビューにて紹介されました。
※2009.3.17  ・静岡新聞[総合版]朝刊に紹介記事「駅弁包む掛け紙つづる」が掲載されました。
※2009.3.23  
日本経済新聞[全国版]朝刊「文化」面に紹介記事「駅弁掛け紙そぞろ神」が掲載されました。
※2009.4.2   ・小学館「サライ」8号の書評で「駅弁掛け紙ものがたり」が紹介されました。
※2009.4.5   ・SBS静岡放送ラジオ放送「山田辰美の土曜はごきげん」に生出演し、「駅弁掛け紙ものがたり」が紹介されました。
※2009.4.15  ・朝日放送「おはようコールABC」に出演し、「駅弁掛け紙ものがたり」が紹介されました。
※2009.4.29  ・FM VOICE CUE 「素敵な街角」に生出演し、「駅弁掛け紙ものがたり」が紹介されました。
※2009.5.1   ・あさひテレビ「とびっきりしずおか」に出演し、「駅弁掛け紙ものがたり」が紹介されました。
※2009.5.10  ・毎日新聞[東京版]に「駅弁:掛け紙の魅力を一冊に」として「駅弁掛け紙ものがたり」が紹介されました。
※2009.5.10  ・TBSラジオ「安住紳一郎の日曜天国」のゲストコーナーに生出演し、「駅弁掛け紙ものがたり」が紹介されました。
※2009.5.12  ・毎日新聞[静岡版]に「駅弁:掛け紙の魅力を一冊に」として「駅弁掛け紙ものがたり」が紹介されました。
※2009.5.14  
日本テレビ「スッキリ!!」の中でテリー伊藤さんに「駅弁掛け紙ものがたり」が紹介されました。
※2009.7.10  
・毎日新聞[全国版]「毎日夫人」8月号の特集「駅弁、大好き」で「駅弁掛け紙ものがたり」が紹介されました。
※2009.8.4   ・ラジオ日本「東京わがままモーニング」に生出演し、「駅弁掛け紙ものがたり」が紹介されました。
※2009.9.11  ・KBCラジオ(九州朝日放送)「ブギウギラジオ」に電話生出演し、「駅弁掛け紙ものがたり」が紹介されました。
※2009.9.15  ・讀賣新聞[静岡版]朝刊の「著者に聞く」のコーナーで「駅弁掛け紙ものがたり」が紹介されました。
※2009.10.16 ・ユーキャン「悠々漫遊」平成21年秋号「日本の食文化駅弁礼賛」に「駅弁掛け紙ものがたり」が紹介されました。
※2009.11.7  ・週刊ダイヤモンド11月7日号のブックレビュー(選評は野村正樹氏)に「駅弁掛け紙ものがたり」が紹介されました。
※2009.11.10 ・FM青森〜FM長崎・全国16局ネット「Oh Happy Morning」に電話出演し、駅弁掛け紙ものがたりが紹介されました。
※2009.11.20 ・新潮社「日本鉄道旅行地図帳・歴史編成・朝鮮台湾」に駅弁掛け紙ものがたりが参考文献として紹介されました。

※2009.11.20 ・新潮社「日本鉄道旅行地図帳・歴史編成・満州樺太」に駅弁掛け紙ものがたりが参考文献として紹介されました。
※2009.11.30 ・讀賣新聞[全国版]朝刊「くらし」面に「駅弁包む時代と旅情」として駅弁掛け紙ものがたり紹介されました。
※2010.2.16   ・讀賣新聞[西日本版]夕刊「レジャーの達人」に駅弁掛け紙ものがたりが紹介されました。
※2010.3.17
  ・世界90ヶ国以上の人に読まれている日本財団CANPAN発行「ひらがなタイムズ」2010年3月号に紹介されました。

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